河童日記

暇つぶしです

僥倖

この間論文を読んでいて、興味深い一文を見つけた。それが正しければ、私が現在行なっている研究に応用できそうに思えた。そこで早速それを使ってみると、やはり一歩前進したのである。それも、私が大学院に入ってから初めての、間違いなく前進といえる前進であったから、なかなかに嬉しい。

ところが、その結果を踏まえてもう一度考察しようと思って論文を読み直すと、間違いに気がついた。解釈を間違えて、私の研究に応用できると勘違いしていたらしいのである。何だか化かされたようである。化学は人を化かすから化学と書くのか。解釈を間違えたのに、たまたま上手く研究が進んでしまった。

困ったことにそのせいで、なぜ上手くいったのか分からなくなってしまった。良い結果だけ先に突きつけられたのである。求める答えが存在することだけは教えてやるから、そこまでの道のりは見つけなさいよ、ということらしい。意地悪な話である。

それでも、こういうことを研究と呼ぶのなら、確かにこれは楽しいかもしれぬ。少し、科学の姿を垣間見たような気がする一日であった。科学は悪戯好きの子供の姿をしている。